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執筆者の写真ノグチユウイチロウ

陰翳礼讃

更新日:2022年6月4日

仄かな灯りの元でこそ、日本の伝統的な美意識である”侘び寂び”を感じる。情景を光や陰影と重ね合わせながら淡々と綴る、昭和8年に雑誌『経済往来』に連載された谷崎潤一郎氏による随筆。


私たちの生活に欠かせない灯り。明るいほどに良しとする現代の文化は、本当に豊かな暮らしを実現させているのだろうか。今となっては、北欧諸国を始めとする海外の方が遥かに陰影のある灯りの文化を感じることができる。


米国のレストランでは、店外からは営業しているかどうかも分からないほど店内は暗く、灯りといえばテーブルに置かれたキャンドルのみ。最初は暗く感じるのだが、だんだん会話も弾み出し、気がついたら閉店まで長居してしまった覚えがある。

案外、暗い方が周りの余計なノイズが気にならないので、目の前の食事と会話に集中でき、結果的にとても心地のよいひとときを過ごすことができるというものだ。


以前に聞いたことがあるのだが、飲食店では回転率を上げるためにわざと居心地が良くないようにすることがあるらしい。


落ち着いた雰囲気の良い空間では客が長居してちっとも儲からないので、昼間のように蛍光灯で煌々と照らし、食べたらさっさと出ていってもらう方が効率が良いのだと。


職場においても同様、工場のように眩しいくらいの方が労働生産性が高いということで、とにかく明るくしがちである。


普段からそのような環境で長い時間を過ごしているから、効率ばかりに意識がいきがちで、定食屋に例えると「味よりも値段」、「あとは待たされないこと」そんなことだろうか。


そのような時代だからこそ、『陰翳礼讃』のような侘び寂びを愉しむ元来の美意識を取り戻す必要があるように思う。


我々が既に失ってしまった陰翳の世界を、せめて住まいの中だけでも呼び返してみたい。

建物の檐を深くし、見え過ぎるものを闇に押し込め、無用の室内装飾を剥ぎ取って。


そうでもしない限り、本当の”心地のよい灯り”がどのようなものか、もはや知る由もない気がする。




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