最近は地方でもマンションリノベが増えつつあり、中古マンションを買ってリノベーションをするなら、いきなりリノベーション会社や住宅会社を訪ねるのではなく、まずは自分で中古マンションを探すことをオススメします。
皆さんがリノベーションを検討するタイミングは、30代くらいで子供が少し大きくなって賃貸マンションが手狭に感じて、持ち家やマンション購入を考える頃か、50代で子育てが終わり、子供部屋が不要になったタイミングが一番多いと思います。
以前は何でも新築が一番で、中古を購入するのは抵抗があるという人が多かったと思いますが、最近は多少古くても手頃な価格で購入できる中古マンションの需要が増えていて、その中でも中古を買ってリノベーションという選択肢が一つのトレンドになっています。
市場にはリノベ済み物件もチラホラ見かけるくらい、今はちょっとしたリノベーションブームともいえるのではないでしょうか。
以前に”安い土地を買わない方がいい理由”というコラムでも書きましたが、同様にどうせリノベするからといって、安易に中古マンションを選ぶと後々後悔することにもなりかねません。
マンションには税法上の資産価値があり、固定資産税、不動産取得税、登録免許税など各種の税金を計算するための基準となる元となる数字で、「固定資産評価額」とよばれ、新築時から築年数を経るごとに少しずつ減っていき最終的にはほぼゼロに近くなります。
この資産価値が減り続ける期間を「法定耐用年数」と呼び、ほとんどのマンションが該当する「鉄筋コンクリートでつくられた住宅」に定められた法定耐用年数は47年と定められており、築47年を超えるマンションは、健全な状態を維持できていたとしても、税法上では資産価値の無いものと判断されます。但し、「法定耐用年数」はあくまで建物の実際の使用年数を踏まえて適宜改正されていくものですので、SDGsがさけばれる昨今ではストック型社会を目指して建物をメンテナンスしながら長く活用するように考え方も変わってきています。
国土交通省の資料によると、鉄筋コンクリート構造の建物の物理的寿命は約117年で、世界に目を向けるとイギリス・ロンドンやフランス・パリなどには、築100年を超える集合住宅が数多く存在します。また、アメリカ・ニューヨークにある世界的に有名な「エンパイア・ステートビル」も築100年に到達します。こうした築100年を超える建物に共通するのが、適切なメンテナンスと修繕を行っているという点です。
築100年のマンションに限らず、築20年〜築30年の中古マンションであっても、適切なメンテナンスと修繕が行われていなければ、建物の寿命は縮んでしまいます。中古マンションの購入を検討する際は、築年数の確認とともに、メンテナンスや修繕が正しく行われている物件かどうかをしっかりと見極める必要があります。
中古マンションの購入を検討する場合、築年数や価格と共に気になるのが「耐震性」ではないでしょうか。新耐震基準は1981年に定められた基準で、それ以前の耐震基準を旧耐震基準と言います。旧耐震基準では「震度5強の地震が起きた場合でも建物が倒壊しない」という基準でしたが、新耐震基準では「震度6以上の大規模地震が起きた場合でも建物が倒壊しない」というように改定されています。
1995年に発生した「阪神・淡路大震災」の建物の被害状況を調べると、昭和46年以前の旧耐震の建物の約13%が大破・中破しており、残りの87%は小破・軽微・損傷なしと結果になっています。昭和56年以降の新耐震の建物は、1.7%が大破・中破、98%が小破・軽微・損傷なしという結果です。このことから旧耐震だから必ずしも駄目というわけでもないとも言えるのではないでしょうか。
しかし、旧耐震のマンションは売却するときに、耐震性への懸念からなかなか買う人が見つかりにくく、買いたい方があらわれたときにも「旧耐震」であるがゆえに担保評価が低くなってしまい、住宅ローンの審査では厳しくなりがちです。金融機関によっては中古住宅の住宅ローンで「築○年以内」と申し込み条件を設けているところもあるので、その辺りは事前に確認が必要です。
公益財団法人東日本不動産流通機構の発表によると、築31年を超える中古マンションは、新築価格の3分の1程度の価格にまで値下がりしており、新築当時の販売価格6,000万円のマンションが、築年数31年目以降になると1,800万円程度まで下がるというわけです。
築30年以上のマンションは新築マンションに比べ立地条件の良いものが多く、購入価格は新築マンションの3分の1程度なので、新築マンションの相場が6,000万円のエリアであれば、それよりも立地条件の良い築30年以上のマンションは1,800万円程度で購入可能というわけです。ちなみに築30年以上のマンションをフルリノベーションする場合、リノベーション費用の相場は、50~70㎡程度のマンションで1000万円~1500万円ほどになります。
マンションの場合、上記の購入費用以外に管理費と修繕積立金がかかります。築年数が古くなると、配管の更新や玄関扉や窓の交換、エレベータ―といった設備の更新などが必要になり、修繕積立金から建物全体の修繕費を賄います。このような大きな工事にする際に修繕積立金が足りない場合は、基本的には修繕積立金を値上げしたり、管理組合で銀行から借り入れをしたり、これらの工事をあきらめるかということもあります。
マンションの中には修繕積立金だけで毎月4万円を超えるような高額の支払いが必要になる物件があったり、修繕積立金は安いかわりに現地にいくと老朽化がひどい物件があったりするケースもありますので、中古マンションの購入を検討する際は、管理費や修繕費についてもしっかりと事前に確認しておく必要があります。
また、鉄筋コンクリート構造の建物の物理的寿命は約117年ですが、排水管をはじめとする各種配管の寿命は30年程度といわれており、各種配管のメンテナンスを実施しやすい環境かどうかが大きなポイントになります。1970年代近辺で建てられたマンションでは、排水管や電気配線がコンクリートスラブに埋設されていたり、スラブを貫通させて階下の天井裏を通している場合があり、階下に影響のある経路で配管が通されている場合、自由にメンテナンスができないばかりか、せっかく購入したマンションなのに不自由をこうむることになりかねません。リノベーションを前提に中古マンションを選ぶ場合は、マンションや建築の知識が豊富な方と一緒にチェックすることも大切です。
それ以外にもマンションは共同住宅になりますので、どのような人々が暮らしているかは思っている以上に重要です。特に相場より安い物件にはそれなりの理由がありますので、立地や広さだけで選ぶと、せっかく買ったのに引越しや売却を余儀なくされることにもなりかねません。資産性の低いマンションや人気のないマンションは、不動産が”負動産”となってしまうなんてことも。
基本的にいい中古マンションは、住んでる人も快適なので、引っ越したり、売ったりしないものです。したがって、そもそもあまり市場にはあまり出てこなかったり、仮に出てもすぐに売れてしまいます。自分が探し出したタイミングで売りに出ていることは、余程のタイミングでないとなかなか出会うことは難しいと思った方が良いでしょう。
本当にいい中古マンションに出会いたければ、普段から不動産情報をこまめにチェックするなどして、焦らず時間をかけて探すこと。ずっと探していると相場感覚もつかめるようになるし、見る目も養えます。そうすると本当にいいマンションと出会った時に「これだ!」というのが分かるようになります。その時にさっと買うことができる人だけが、本当にいいマンションを手に入れることができるのです。
分からないからといって大した予備知識もなく、最初にリノベーション会社や住宅会社を訪れるのは、まさにいいカモです。リノベーションするからといっても何でも良いわけではありません。今ある売れ残りの中から選ぶことになり、後々後悔することにもなりかねません。
あとは家づくりのパートナー選びも大切です。その人と感性が合うかどうかは予算以上に大事な要素。リノベーションは形がないものを作るだけに、どんな仕上がりになるかは絵に書いただけでは分からないものです。逆にいえば、感性が合う人や会社との住まいづくりは、人生でもっとも豊かで楽しい時間になるのかも知れません。
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