「リサイクル=サステナブル」と安易に捉えすぎている人は少なくありません。リサイクルするプロセスにおいて回収・収集、そして処理する際にも加工に必要な一定程度のエネルギーと薬品等を必要とします。そこからようやく次なる製品への加工が行われるのですが、このようにリサイクルするにも手間がかかるので、その製品があまりにも汚れていたり、素材生成が複雑だったりする場合、反対に環境負荷が増えることもあります。
世界の繊維市場の52%を占めるポリエステルは耐久性に優れ、メーカーにとって費用対効果が高い反面、生分解しないという大きな欠点があり、廃棄されたポリエステルの衣服は何十年、何百年と埋立地に残り続けます。
リサイクルポリエステルは古着から作られると思われているかも知れませんが、ほとんどの衣料品は数種類の素材が複雑に組み合わさっていてリサイクルは困難です。リサイクルポリエステルの99%は、ペットボトルなどの古いプラスチックからリサイクルされていて、無限にリサイクルできるわけではないので、その後は埋立地行きになることがほとんどです。結果的に原料となる使い捨てプラスチックも延々と生産されることになります。
リサイクルされたものであってもなくても、合成繊維はマイクロプラスチックを放出します。この小さな汚染物質は水生生態系に入り込み、海洋生物に有害な影響を与えます。北極圏のマイクロプラスチック汚染の大部分は、ポリエステルに由来するという調査結果もあります。
リサイクルポリエステルを選ぶことは、サスティナブルな解決策のように見えるかもしれませんが、直面している廃棄物問題を軽減するために最低限のことしかしていないともいえるでしょう。ファッションのサスティナビリティに対する真の解決策は、取る・作る・捨てる・という直線的な仕組みから業界全体が脱却することではないでしょうか。
環境省の調査によると服がゴミとして出された場合、再資源化される割合はわずか5%。多くの衣服はそのまま焼却されるか埋め立て処分されています。捨てられる服の量も深刻です。国内でゴミに出される衣服は年間約47万t。1日あたりにすると大型トラック120台分の服が焼却・埋め立てされています。
一部の自治体やメーカーは服のリサイクルやリユースに取り組んでいるものの、再活用される衣服はまだまだ少ないのが現状です。サステナブルファッションへの関心は高まっていますが、具体的なアクションを取る人が少ないのも事実です。
近年は服一着の価格が安くなり、トレンドのファッションをより気軽に楽しめるようになっています。そうした背景から服一着あたりのライフサイクルが短くなり、服の供給量が拡大している現実もあります。1年間に1回も着られていない服が1人あたり35着もあるそうです。
環境省のサイトの中で着目なのは、「いま持っている服を長く大切に着る」という点です。一着を1年長く着るだけで、日本全体として3万t以上の廃棄量の削減につながるそうです。
調査によると、衣服の購入から着なくなったり処分するまでの平均期間は4.9年。対して、ずっと着たい服があって着続けたい服の理想期間は平均6.3年という結果に。また、「この先何年でも着続けたい一着がある」と答えた人は全体の6割を超え、その枚数は平均3〜5枚です。
お気に入りの服は実際にはもっと長く持っていたかったのに、捨てざるを得ない理由があって手放したという人が多く、服を処分する理由としては、衣類の形が崩れたり、破れたりといったダメージがあって着なくなったり、汚れが目立つようになって着なくなるという意見が上位を占めています。
このことから多くの人は、流行の服よりも定番的に活躍できるような服を求めているということが伺い知れ、メーカーや販売店の毎シーズン売上のために新しいトレンドを作り出し、買い替えを前提としたビジネスモデルとのギャップが、服の大量供給・大量廃棄という問題につながっていることが分かります。
2015年にレジェンド・サーファーのケリー・スレーターが立ち上げたファッション・ブランド「OUTERKNOWN(アウターノウン)」。ブランドのクリエイティブ・ディレクターを務めるジョン・ムーア氏は、ブランド立ち上げ当初のインタビューで以下のように語っています。
「エシカルに作られているプロダクトを着ることで、人や地球に対しいっしょに責任をもつ一員になれる。だから気分もよくなる。着心地やマテリアルの肌触りといった物理的な気持ちよさだけでなく、服を選んだことを含めすべてにおいて気持ちがいいことが重要だと私たちは考えている。」
しかし、他のサーフクロージングに比べて価格帯はかなり高めに設定されていて、多くの人が価格についてネガティブな反応をみせた。しかし、彼らの信念やそれを貫く取り組み、そしてクオリティを見たとき、その価格は品質相応だといえる。耐久性が高いうえに、デザインやスタイルが普遍的であることに意味があるとジョンはいう。トレンドを追わず、飽きのこない長く着られる服であるということ。いろんなシーンで着回しができる汎用性と、トレンドの変化に左右されない不変のスタイル。つまり流行にあわせて次々に服を買い替える=消費することの真逆をアウターノウンは提案しています。高品質なアイテムを愛着をもって長く着ていくことを考えたとき、価格だけでは分からない大切なものが見えてくるでしょう。
アイテム数と生産数はフレキシブルに調整している。新しいプロダクトやシリーズを発表するとき、きわめて最小限でスタートするようにしているそうです。市場の反応を見極めて、人気がでたり定番アイテムになるとわかったら深く切りこんでいく。「初期のころから作っているブランケット・シャツが好例。最初は300枚しか作らなかったけど、いまはロングセラー・アイテムなので、よりたくさんのカラーやパターンを提供し、生産数も増やしている。需要を見ながら責任をもってアイテム展開をしているんだ。」とはいえ、作り過ぎないということも、余剰在庫や無駄を抑える意味では重要であり、環境に対する負荷を減らすことに繋がります。いまブランド内では“Make Less Better”(=よりよく減らそう)というフレーズが共有されているそうです。
「大量に買うのではなく、本当に気に入ったものを買おう。そうすればもっと物を大事にするようになる。自分はすでにシドニーに5〜6週間滞在しているけど、数枚のシャツとスウェットのペアとパンツとジーンズ、5枚のTシャツだけを基本的に着回しているよ。それで満足している。ランドリーには沢山行かないといけないけどね。」(ケリー・スレーター)
このように、これまでのファッションビジネスとは違った視点で服作りをおこなうブランドや企業も、少しずつですが増えてきています。これらの取り組みが上手くいくかどうかは、最終的には消費者がそれらのブランドを支持するかどうか次第です。私たち一人ひとりが目先の利益にだけとらわれずに、本当に大切なモノやコトを考えて行動することが大切だといえるでしょう。
LIVING WITH LIGHTS | 心地よい暮らしの照明術
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