”照明”という言葉を検索すると「光で照らして明るくすること。特に、電灯などの人工的な光で明るくすること。」というように行為を指す名詞を意味しています。
また照明デザインとは、空間もしくは光を当てる対象物をどのように照らす(魅せる)かを光を使ってデザインすることです。
しかし、広く一般には照明というと”照明=明るく照らす”という道具のことで、そこには照明が空間を明るく照らすことは前提であり、照明デザインは「照明器具のデザイン」、いわゆるプロダクトデザインをイメージする人がほとんどだと思います。
その背景には戦後の経済成長期に蛍光灯の普及と同時に、夜でも昼間のように明るい室内や街並みが良いのだという思考があり、谷崎潤一郎氏の随筆『陰翳礼讃』にあるような日本人古来の侘び寂びといった感性は、いつも間にか過去のものとしてどこかへ消えていってしまったようです。
『陰翳礼讃』から100年近くが経ちますが、空間における照明の役割が単に明るく照らすだけの道具から抜け出せずにいるのは、”照明=明るく照らす道具”という価値観が変わらないままでいることに他なりません。
単に「暗いから明るくする」といっても「明るければ明るいほどに良い」と考えは浅慮の一言につきます。日本には古来から”侘び寂び”という言葉があるように、何事にも丁度良い塩梅はあるもので、料理にしても本当に美味しい料理というものは全ての材料が絶妙なバランスの上で成り立ちます。照明デザインにおいても同様に、照明の色温度や配置など、良質なデザインが生み出す情景は多くの人々が魅了し、そこで暮らす人の感性を育みます。
そのようにいうと如何にも高尚な世界のように感じられるかもしれませんが、人には本来そのような感受性が備わっているもので、便利や機能といった”機能的価値”は他との比較で決まるのに対し、感受性のような”情緒的価値”は自分自身がどのように感じるかです。
つまり、照明の本質は空間における光でデザインすることにあり、こと住まいにおける照明の価値は暮らしの中に心地よさをもたらすことに尽きるのではないでしょうか。
実際に明るければ明るいほど良いと感じる人よりも、程よい暗さと明るさの絶妙なバランスによって生まれる空間の方に心地よさを感じる人の方が多いと思いますが、それもまた人によって感性の違いがあるように、表現の仕方も人それぞれ。それが故に照明デザインの面白さと奥深さ、そして未知の可能性があるのだとも思います。
◆「照明から考える家づくり」をコンセプトにした心地よい灯りのある住まいの提案。北欧のような豊かな灯り文化と上質なインテリアデザインでお客様の理想の暮らしをかたちにします。
《IN THE LIGHT Lighting Design & Interiors》
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