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執筆者の写真ノグチユウイチロウ

暮らしを変える照明術

「照明によって暮らしが変わる。」そのようにいわれたら、高価なペンダントライトを買って満足感を味わうことだと思う方が多いのかも知れません。


ファッションやクルマ、住まいなど、これまでは人が持っていないものを持っているという価値観が主流でした。現代の物質的豊かさが満たされた日本においては、もはや”モノ”を持っているだけでは価値はなく、いかに人よりも良いものや最先端のものといったどんな”モノ”を持っているかというような価値観の変化を感じます。


照明はそれ自体は単なる光源でしかありません。天井についた沢山のダウンライトはまさにその象徴といえるでしょう。機能としてのダウンライトに求められるのは、できる限り空間の邪魔にならないように配置され、出来ればその存在感はゼロでありながら、空間や対象物を明るく照らすものであって欲しい。シンプルで無機質な空間を好む建築デザイナーの方々からはそのような声を耳にします。


それに応じるかのように照明メーカーのダウンライトのサイズは年々小さくなり、種類もどんどん増えています。しかし、そんな無機質でアートギャラリーのような洗練させた空間が、人が暮らすに相応しいかといえば決してそうではないはずです。


現在流行中のシンプルでモダンな住宅は、1920年代に「装飾は罪である」と唱えたモダニズムの雄、アドルフ・ロースの言葉にもあるように、無駄を省き、徹底的に効率的で機能性を高めることが美徳とされています。結果的に無機質で画一的な住宅がたくさん建築されている現状を見渡すと、人は案外手間暇を好み、機能や便利さとは別のところに愛着を感じるものなのだということに気づきます。


存在感のない光で照らされた無機質な空間よりも、愛着のある照明器具から放たれる温かみのある灯りを見て美しいと感じる人の方が多いと思いますし、均一に照らされた壁や床よりも光のグラデーションや陰影のある壁や床が良いと感じる人の方が多いのではないでしょうか。


しかし、残念ながらいまだに日本では、相変わらず明るければ明るいほどに良しとする考えが主流です。

1933年に発表された谷崎潤一郎氏の「陰翳礼讃」でも語られる日本古来の侘び寂びという感性は、合理主義な世の中で徐々に忘れられていっているようにも感じます。


照明についても明るければ明るいほどに良しとする文化はあまりにも浅はかであり、本当によい照明とはその空間にあった”丁度よい明るさ”をもたらしてくれるものです。


美しいフォルムの照明器具から放たれる”丁度よい明るさ”のある空間には、人の琴線に触れるような情景が生まれ、そこに本当の豊かさを感じることができます。タイトルの「暮らしを変える照明術」とは、そのような情景を生み出す照明のあり方を指しているのです。

 

『心地よい灯りのある理想の暮らし』


照明から考える家づくりをコンセプトにした美しい灯りのある暮らしの提案。豊かな灯り文化と上質なインテリアデザインでお客様の理想の住まいをかたちにします。


〈IN THE LIGHT Lighting Design & Interiors〉

熊本県熊本市北区武蔵ヶ丘1-15-16






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