真っ白な空間に最小限のモノと暮らす人をミニマリストだとすれば、様々な素材や色、沢山のモノと暮らす人をマキシマリストと呼ぶのでしょうか。
“less is more“はよく耳にする言葉の一つではないでしょうか。“少ない方が豊かである“という、20世紀に活躍したドイツ出身の建築家ミース・ファン・デル・ローエの名言で、シンプルなデザインを追求することで美しく豊かな空間が生まれるという建築家としての信念を表した言葉です。
インテリアにおけるミニマリズムとは必要最小限なものだけで暮らすという思想であり哲学である。インテリアの装飾をできるだけ無くしてあらゆる細部を研ぎ澄ます。ミニマリズムとは最小限のモノの中に美を見出すことに尽きるといえるでしょう。
“ミニマリズム”という言葉は1960年代半ばから、アメリカを中心とした芸術家・ドナルド・ジャッド、ロバート・ライマン、アグネス・マーティンらの作品を表す言葉として使われ始めましたが、イギリスのジョン・ポーソンはミニマルなアプローチで著名な建築家で、1990年代にCalvin Klein(カルバン・クライン)のミニマルなニューヨーク旗艦店をデザインして注目を浴び、東京・表参道のジル サンダー旗艦店はまさにミニマリズムを代表するファッションブランドと建築家のコラボ作品ともいえるものです。
一方のマキシマリズムとは、巨大な家や溢れんばかりの財布を意味すると思われるかもしれませんが、鮮やかさ、豊かさ、創造性を追求する美学で、ミニマリズムの“less is more“に対して、“more is more“と「多いほど豊かである」という思想です。
一般にマキシマリストというと所ジョージさんのような好きなモノに囲まれて過ごす人をイメージされる人が多いと思いますが、単にモノを集めるのが好きな人はコレクターです。
マキシマリズムとは、多くのモノを所有しているというよりも、複雑なモノの組み合わせによって生まれる個性や独自の世界観を表現する芸術的手法のことで、そのマキシマリズムを代表するインテリアデザイナーといえば、ケリー・ウェアスラーの名を挙げる人は少なくないのではないでしょうか。
アメリカの女性インテリアデザイナーとして彼女の生み出すインテリアには、あらゆるスタイルや方法が組み合わされ、さまざまな素材、時代、模様、構成、大きさなどを同じ空間の中に存在します。
沢山の個性的な家具やアートはどれもそこに置かれるべき明確に意味があり、他に誰にも真似できないような斬新かつ洗練された空間は多くのセレブリティを魅了しています。
日本の著名人いえば、写真家で映画監督の蜷川実花さんのような方が挙げられるかと思います。ご自身のファッションもさることながら、映画「さくらん」や「ヘルススケルター」といった独特の色彩感覚や映像美、さらには個性の強い俳優陣を見事にまとめ上げ、唯一無二の世界観を作り上げるスキルは、まさに日本を代表するマキシマリストの一人といえるのではないでしょうか。
このようにミニマリズムとマキシマリズムは一見するとモノが多いか少ないかの違いのように捉えられがちですが、どちらも究極的にまでこだわり抜かれているという点においては全く変わりなく、”引き算の美学”か”足し算の美学”といった思考性の違いがあるだけです。
日本は伝統的にミニマルな考え方や空間作りが一般的であるのに対して、欧米は歴史的に見てもマキシマリズムな伝統文化が強いといえるのかもしれません。そのことはそれぞれのファッションやインテリア、都市を見れば如実に感じることが出来るのではないでしょうか。
photo by Kelly Wearstler https://www.kellywearstler.com
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