“God is in the details”(神は細部に宿る)は、20世紀を代表する建築家ミース・ファン・デル・ローエの言葉。ミースは他にも、“Less is more”(少ない方が豊かである)という有名な言葉も残しています。
ミニマルやサスティナブルの広まりと同時に“Less is more”という言葉を耳にする機会が増えましたが、近代建築における真っ白で何もない空間は一見すると、“Less is more”を体現しているかのように思われがちですが、ミースのいう“Less is more”とは、常に “God is in the details”と表裏一体です。単にシンプルなだけでは“more”にはならないということです。
究極まで無駄を排除し、残った部分を細部に至るまで徹底的に拘る姿勢こそが、“Less is more”の本質。無駄を排除したり、シンプルにすることはそれほど難しくはないのですが、実は細部まで徹底的に拘ることは相当に困難です。実際にやったことがある人は分かると思いますが、たった1ミリ2ミリのことでも答えが見つかるまで延々自問自答することになり、それを全てのことにおいて徹底するのですから気の遠くなるような話です。
しかし、世界の超一流といわれる人たちは総じて、そこに全てがかかっているといっても良いほどに細かな部分にまで徹底して拘るのです。それ故、時間もコストも相当にかかるので高額になるのですが、それだけのことをしているという結果ともいえるでしょう。
世の中の多くのものは案外シンプルです。しかし、それは決してこだわった結果ではなく、“シンプル=簡単”という単純な発想。つまり単純だから誰でも簡単に真似できるのです。そのようなデザインは、どこかのデザインの模倣やコピーでしかありません。実はそれこそがミースらが否定した古い時代の価値観そのものです。
ミースが活躍した20世紀前半は合理主義や機能主義が広がり始めた時代。それ以前の建築といえば、無意味な様式にとらわれた建築や安易な模倣が横行していました。貴族らが表面的な華美な装飾を競い合い、それに無駄な労力やお金が使われていたことに疑問を感じ、一切の無駄を排除してもっと本質的な部分に徹底的に拘ることで、より良いものを作ろうとしていたのがモダニズムの始まりです。そのシンプルな建築はそれまでの模倣やコピーではなく、新しい価値観を求めて進化していく過程に生まれたデザインであり、思想だったのです。
当時に作られた建築や家具は現代でも名作として知られたものが数多くあり、それらのほとんどがそれ以前には存在しなかったオリジナルのデザインです。現在の私たちの周りにある多くのデザインは1920年代に生まれたモダニズムを継承したものですが、裏を返せば当時の模倣やコピーであるともいえるのです。
今も昔も当時のオリジナルの建築や家具が変わらず評価され続けるのは、本質的な価値をきちんと捉えたれていたからに他なりません。それらはこれから先も時代と共に風化していくことは決してないでしょう。
日本では“Less is more”という言葉だけが一人歩きして、いつも間にか「少ないことが良いこと」といった意味に置き換えられているように感じますが、“God is in the details”があってこそ、はじめて“Less is more”が成り立つのだということを忘れてはならないのです。
"STAY WITH LIGHTS"
6月1日〜27日は熊本市中央区上通町にある人気カフェ『オモケンパーク』にて、『IN THE LIGHT』初インスタレーションを開催。イギリスのインテリアブランド"Tom Dixon"の照明を使った大胆なライティングは、空間デザインの新しい可能性を感じさせてくれるはずです。
昼間でも薄暗い日が多い梅雨の時期にピッタリのイベント。いつもと違う雰囲気の店内で美味しいコーヒーをお楽しみ下さい。
STAY WITH LIGHTS vol.1
6.1 wed - 6.27 mon
11-19 close Tuesday
@OMOKEN PARK
LIVING WITH LIGHTS | 美しい灯りと暮らす
IN THE LIGHT Lighting Design & Interiors
861-8001 熊本県熊本市北区武蔵ヶ丘1丁目15-16
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