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執筆者の写真ノグチユウイチロウ

アドルフ・ロース

更新日:2021年6月5日

アドルフ・ロース  Adolf Loos (1870 - 1933)

ブルノ生まれ(当時はオーストリア=ハンガリー帝国)。19世紀末のヨーロッパで、最も影響力をもっていた建築家のひとり。同時に、モダニズム運動の基礎を形作る言論を著して注目を集めたことでも知られる。

リベレツおよびドレスデンで建築を学び、その後1893年から1896年まで3年間アメリカ合衆国に滞在し、アメリカの工業建築の革新的な効率の良さに感銘を受け、自身の作品にもその影響が表れている。その後ウィーンに移り、そこで数多くの論評を書き綴った。特筆すべきなのは『装飾と罪悪(Ornament und Verbrechen)』で、建築において装飾要素をそぎ落とすことは精神力の象徴であると主張した。


モダニズム建築の先駆者のひとりとして活躍し、「装飾は罪悪である」というセンセーショナルな言葉を生んだアドルフ・ロース。19世紀末〜20世紀初頭の時代に生まれた思想であるものの、本質的な部分では現代にも通じる点が興味深い。


『装飾は罪悪』

「モノの形というのは、そのモノに物質としての寿命がある限りは長持ちする。しかし装飾は飽きられた時点で価値がなくなってしまう。」


前述のロースに対する装飾主義者たちの主張はこうだ。


「ある消費者が家具を買い、十年後にはもうその家具に飽きて、また新しい家具を買い換える。このような消費者は、モノの寿命が尽きて使えなくなるまで買い替えない人よりも好ましい。モノを作る産業界はそれを望んでいて、人が次々とものを買い換えることによって大勢の人たちが仕事にありつくことができる」


商品を消費することであらたな商品を購買する。そのことで経済が循環し、そのサイクルが早ければ早いほど沢山の商品は売れ、それによって商品をつくる人の仕事も増える。結果、社会全体の富が増えて豊かになると、まさに現代の資本主義社会そのままの発想です。


これに対し、ロースは次のように応える。


「それなら私にもいい考えがある。都市に火を付けて燃やしてしまおう。国中に火をつけて燃やしてしまえばいい。そうすれば沢山、金儲けができ、楽な生活ができて、国中、沸きかえるだろう。」


まるで戦争によって利益を得た国や企業の本音を聞かされているかのようです。


さらにロースは言う。


「私がモノを買う場合でも、形と材質が気に入り長く愛用することができ、作りが良くて丈夫たと確信したら、余計な装飾のあるモノの倍の金を支払ってでも買う。早く飽きさせて次なる商品を買わせるために装飾を施すなどということよりも、より健全であるといえよう。」


とても20世紀初頭の話とは思えません...というよりも全く進歩していないのか、歴史が繰り返されているのか。


装飾がないことで建築許可が下りない時代において、自分の信じる「建築」のあり方を貫いたロースの思想は、単に装飾に対する批判というよりも、時代に迎合しないその姿勢こそが、ル・コルビュジエら近代建築家たちへ大きな影響を与えたのはいうまでもありません。


当初は純粋で素晴らしい思想や文化ものちに大衆へ広がるなかで、拝金主義者達の安価で粗悪なものづくりへ移り変わり、そこに疑問を感じたウィリアム・モリスはアーツ&クラフツ運動を、アドルフ・ロースの「装飾と罪悪」を生み出したのだと思います。


資本主義やモダニズムが先進国を中心に経済発展と物質的な豊かさをもたらした一方で、モダニズムも既に100年が経過する中で、今の世の中も同じように模倣や粗悪なものづくりが広がっているように思います。

世界でサスティナビリティを求める動きが始まっている今の状況を見て、かつてのウィリアム・モリスやアドルフ・ロースら、先人たちの思想に共感を感じるのは私だけではないはずです。



 

『灯りを愉しむ』美しく、心地のよい暮らし


古き良きもの時代のものを現代的な解釈でリノベーションをすることによって、次世代まで受け継がれるような新たな価値を創造します。住空間に関わる建築・家具・照明などをトータルで考えるインテリア・アーキテクチャという新しい発想は、これまでにない上質な暮らしと心地よさを実感させてくれるはずです。


《IN THE LIGHT Lighting Design & Interiors》

〒861-8001 熊本県熊本市北区武蔵ヶ丘1-15-16

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