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執筆者の写真Yuichiro Noguchi

人と光の理想的な関係(前編)

更新日:2021年4月10日

ほとんどの建物には窓がついていて、建築家は光の入り具合も考慮して設計します。

南側に窓を設ければ暖かい日差しが降り注ぎ、北側に設けた窓からは柔らかい光を取り込むことができます。東の窓からは透明感のある朝日が入り、西の窓では夕方になれば一日の終わりを告げるような哀愁漂うオレンジ色の光を見ることができます。


人は朝の光で目覚め、暗闇と共に眠る。私たちの体には昼夜のサイクルに応じた「サーカディアンリズム」と呼ばれる生体リズムが備わっています。良質な睡眠を促し、健全な心身の礎となるこの生体リズムが、実は光と深く関連しています。快適な暮らしを送るためにも、サーカディアンリズムの仕組みを理解し、光を上手に取り入れた住まいづくりが大切です。


「夜、ベットに入ってもなかなか寝つけない」「寝起きが悪く、朝は体がだるい」という人は少なくありません。人間には体内時計といったものがあり、ホルモン分泌や体温、血圧の変化といった身体機能と共に睡眠と覚醒のリズムをコントロールしています。この体内時計が作りだす一日の周期が「サーカディアンリズム」と呼ばれるもので、光や睡眠および覚醒と深く関わっているホルモンの一つがメラトニンです。


メラトニンは暗くなると分泌が増え、明るくなると抑制されます。それにより人は明るくなると自然と目覚め、暗くなると眠くなるという仕組みです。そのため深夜まで明るい環境にいるとメラトニンが抑制され続け、それが睡眠の質を低下させるという訳です。


近年の研究では、目に入る光の量だけでなく、光の種類によってもメラトニンの分泌が左右されることが分かっています。昼白色の照明(5000K)と電球色の照明(2300K)では、5000Kでメラトニンの増加が最も抑制されるのに対して、2300Kではダメージが少ないそうです。


人は朝の光と共に目覚め、夜は蝋燭のような温かみのある灯りの過ごす。人と光の理想的な関係は自然の摂理にかなった生活そのものなのです。


(後編へと続く...)



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