前編で人と光の理想的な関係は、「自然の摂理に従った暮らし」であるということと、「夜間の灯りは色温度が低く控えめにした方が良い」という2つのポイントをお伝えしたのですが、後編では「実際にどのような灯り空間にしたら良いのか」ということをポイントにして書きたいと思います。
日本では長らく経済的な成長こそが人を豊かにすると考えられ、人口が増えるということと国民の所得を増やすことで、新たな需要を生み出し経済を成長させるといった仕組みのことです。その中で多くものを普及させるために、効率的で低コストであるということが重要視されてきました。
そのような社会ではいかに大量に良質なものを素早く供給できるかといった考え方が優先され、結果的に本来の人間らしい文化的な創造がおざなりにされてきました。
それによって生まれたのは、安易なデザインのコピーを良しとする文化と、大量生産・大量廃棄のサイクルです。そのような社会では、伝統的な文化の継承や新たな文化の創造は行われず、一時的な上辺だけの豊さだけしか残りません。
一見、灯りと関係ない話のように思えるかも知れませんが、実は灯りに対する考え方は、この事象と深く関わり合っています。
私は照明の相談をされたときに、わかりやすい例えとして、よくファミレスとスターバックスの灯りの違いの話をします。前者は効率的に全体を明るく照らす灯りの使い方なのに対して、スターバックスは必要な所へスポット的な灯りを配置することで明暗を上手く使い分けています。それによってお店の雰囲気が変わるのは勿論ですが、実は来店客がその場所で何をするかを考えた結果が「灯りの使い方の違い」を生んでいるのです。
ファミレスは基本的に食事を提供する場所で、店内には同じような席が並んでいて、昼夜関係なく照明が照らされています。
かたやスターバックスはコーヒーを飲むためだけに行くでしょうか?
友人と談笑したり、仕事の打ち合わせ、個人で勉強や仕事をしている人まで様々です。ほの暗い店内には日中は自然な光が差し込み、暗くなると温かみのある灯りに包まれ、色んな種類の席を楽しむことができます。
同じ飲食店に含まれるこの両者ですが、ファミレスが食事を提供しているの対して、スタバは場所を提供しているという考え方の違いがあります。
つまり「どのような灯り空間にしたら良いか」という問いは、そのまま「その場所でどのように過ごしたいか」ということを考えることなのです。
これまでの住まいの灯りは「少ないコストで効率的に明るくする」といった考えで計画されたものがほとんどです。照明器具がシーリングライトからダウンライトへ変わっても、部屋全体を昼間と変わらず明るく照らすといった人々の灯りに対する基本的な考え方は変わっていません。流行りのカフェ風な灯りを取り入れることは簡単ですが、表面的な雰囲気よりも大切なのは「どのように暮らしたいか」といったことだと思います。
住まいの灯りを考えることは、「人生をどう生きるか」を考えることにもつながり、それはとても意味ある大切なことだと思います。
皆さんもぜひ一度じっくり考えて見てはいかがでしょうか。
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